中国の図像を読む | |||||
第六節 黄金バットは中国生まれ?《13p》 | |||||
(「七、日本の蝙蝠文」のつづき) |
|||||
その他にも江戸時代には様々なものに蝙蝠文がデザインされている。
それらの例をいくつか見ていくことにしよう。四十・四十一・
四十二図などは割合リアルな形でコウモリをデザインしている。一方、四十三図に
見られる型紙にデザインされた蝙蝠文は、正面からの像を描くことを避け、背面から見た形を描いている。さらにこれが
四十四図になると、そこに描かれたものがコウモリであることは、指摘されることがなければおそらく
気づかないであろう。また逆に言うなら四十四図のような蝙蝠文は決して中国では描かれたり、用いられたりすることはないであろう。そういう意味では、大変日本的な蝙蝠文様であるということができるであろう。これなども
先ほど韓国の蝙蝠文の項で述べた異国の文化を取り入れた結果起こった変容と同じものなのである。同様の例は型紙だけではなく、同じく
江戸時代の染付け皿に意匠化された蝙蝠文にも見ることができる。(四十五図)このように、奇怪な姿を デフォルメした形で受け入れたところに日本文化の一つの特徴が窺える。 |
![]() 四 十 図 蝙蝠図三所物 (『日本の文様18 動物』より) ![]() 四 十 一 図 鐔に描かれた蝙蝠 (『カラーブックス三三〇鐔』より) |
||||
|
|||||
四十六図にあげたものは、琉球王国に伝わる吉祥文づくしの豪華な衣裳であるが、この着物と前章であげた清朝の皇后の着用した衣裳に
描かれた吉祥文とを見比べれば、日中の吉祥図案の差異が明確に見て取れるであろう。両者ともにいくつもの吉祥物が描かれている点は
同じであるが、清朝のものがその全ての部分が文様によって埋め尽くされているのに対し、沖縄のものはなんと余白の多いゆったりとした文様であることか。中国のものは普段着であり、一方沖縄のものは晴れ着であると考えられるのだが、その文様の豊饒さにおいては中国の普段着の方が勝るというおかしな事態を引き起こしているのである。 四十七図にあげるものは、同じく蝙蝠文を用いた日本の着物の一つであるが、既に蝙蝠文は衣装の全面に用いられることはなく、襟から裾にかけて用いられているに過ぎない。ここに至れば、中日の蝙蝠文受容の差異は明らかであろう。(この章続く) |
|||||
|
|||||
![]() ![]() |