偽鑑先生の作文講座 その五
五、詩集・愛することをしらないままに(十代の頃のポエムです)《6p》
 
    雨 ただひたすらに 雨
 
白いカサの
赤いリボンがゆれる
 
小さな 少女の手は
涙を流し
悲しみと寒さに ふるえてる
 
緑のコートの
肩は 濡れ
黒い髪は
水の宿
 
雨のカーテンの
向こうの影を
まだ 少女は見つめている
 
雨…雨…雨…
頬を伝うのは 雨
 


   死にぞこないの詩
 
死にぞこないの蝶が一匹
秋の空に 浮かんでた
死にぞこないのひまわりが
黄色の花を 咲かせてる
 
死にぞこないのみつばちが
枯れた花に とまってる
死にぞこないの小さなヘビが
逃げるように 消えていく
 
死にぞこないの
みんなを集め
今さら憎むことなどやめて
みんなで静かに 死んでゆこう
 
死にぞこないの
ぼくの愛と
死にぞこないの
ぼくの青春と
死にぞこないの
このぼくで
静かに静かに
死を 待とう
 
  古いノートの間から出てきた、あなたの詩
   初めて君のノートのすみに書いてあった詩を見た時、山岸君と二人で写したものです。
   あなたは忘れてしまったかもしれませんね。

  
    
 
四方から私におしかけてくる道
私は まちがった道を
歩んできたのでしょうか
あなたのことを忘れられなくて
愛の道を歩いてきた
私ですけれど…
今 ふと
立ち止まってしまうんです
進めば 何か 恐ろしいものが
待っているような気がして
なんとなく あたしが進むことによって
あなたが こまるんじゃないかと思って―
私は もときた道を
今からもどろうとしています
それで あなたが 「いい」と言うなら
それで あなたが 「幸福」と言うなら
 
四方から私におしかけてくる道
私はこれから どの道に進めばよいのでしょう
私は そこに立ちすくむだけ…


   別れ
 
あなたに会って 今日まで
「生きていてよかった」と感じました
ほんの少しの間だったけれど…
とても楽しかった…

あなたに会って
「恋のすばらしさ」をわかりました
とてもうれしかったけど
もう お別れね
でも
わたしはあなたが大好きでした
いいえ
大好き なんです






    巡る日々
 
この町を 私が
去ろうとした日
北風が 黙って
書きかけの手紙を
おいて いった
今日も あの町には
北風が 吹く
 

    雪と思い出
 
雪が降っています
白い花びらが散るように
雪が降っています
白い妖精が降りるように
 
雪はあくまでも白く
静かに 私の前に
降り続けるのです
広い草原の上に
たくさん積もった雪
私は振り返ることも
許されず
ただ 歩くだけなのです
 
私の過去は 二度と返りません
楽しい思い出も
みんな みんな
私の今までの
足跡の中に 残っているのです
そして 彼の思い出も
 
雪が降っている
私はただひたすら
歩きつづけるだけ
雪が 降っている
彼の思い出を
洗い流すかのように
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