おとぎ話しのように
紋白蝶は
溶けそこねた冬の雪が姿を変えたもの
そんな話しを 信じてみよう
ふれると白い雪を残して消える
淡い淡い 蝶だから
赤とんぼは
消えそこねた夕焼けが姿を変えたもの
そんな話しを信じてみよう
夕焼け空へ帰ろうと吸いこまれてゆく
赤い赤い とんぼだから
風を光の中を
さあ 風の中を かけてみよう
どこまで行っても 幸せなんてないかもしれない
風の中でも一人ぼっちだと
哀しみばかり数えてみても
幸せが横むくだけさ
風に追われて暮らすよりは
走りながらかぜの音を聞いていたい
そして いつかぼくも
風の中で 風になる
さあ 光の中をかけてみよう
どこまでいっても
愛なんてないかもしれない
この限りない 光の中で
浮かび上がる淋しさも ふりきって……
心につもった雪も 溶けてゆくさ
そして いつか どこかの街で
光を浴びる あなたに 会える
冷たいガラスの中で
冷たいガラスの中で
ひとつひとつ 時を運びながら
砂が落ちる
無意味にそれを見つづける
たいくつな午後
冬の近い外の風は
冷たすぎて 飛び出せない
電話で愛をささやくには しらじらすぎて
たいくな午後
三分ごとに ただ 砂時計をひっくり返す
たいくつな午後
女の子
雨の中
誰かを待ってる女の子
カサを貸そうか
君たち二人のために…
夜の駅
うつむいている女の子
10円玉貸そうか
電話はすぐそこさ
小さな茶店
一人泣いてる女の子
コートを貸そうか
冷たい心のために…
静かな初雪
空を見上げる女の子
愛を 貸そうか
ぼくら二人のため
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哀しみの色
白い冬に咲く花に
どこか似ているあなた
咲き誇る花の中で
いつも あなたは一人
白い色は 哀しみの色ではないはずです
ひとつ秋に降る星に
どこか似ているあなた
あの時のやさしさを
けして 忘れはしない
流れ星は 不幸の星ではないはずです
季節はかわり
知らない間に 季節はかわり
いつも何か おきざりにしたまま過ぎてしまう
気がついたとき 季節はかわり
枯れ葉の中に 忘れたままの恋の夢
目をこらして見たら 季節はかわり
白い雪はすべてうずめてしまった
風の音に 季節はかわり
涙はかれて花も咲いている
もうすぐ 春が来る
小春日和に
ありふれた幸せに
満足してみたいのだけど
風の中の風船のように
追いつけない 愛ばかり
すれちがいばかりの心を抱いて
今日という日も 消えてゆく
くるくるまるめた 古い手紙も
幼いぼくの まちがいだらけ
追いつけない あの人を
いつかつかまえるのだと
もう 幾日も…
秋風
秋風と共に
想い出の風が去り
赤い実をはじいて 庭も吹く
冷たい風にかさなるように
冷たい想い出 吹きすぎて
イチョウの木も 冬化粧
さよならの風が
時のかなたへ 涙を飛ばし
いつのまにか哀しみも忘れてしまう
夢見る少年
深い空に浮かぶ
星を見て
ありもしない明日を 思っていられた
まだ 夢見る少年だった頃…
澄みきった夏の
青空を見て
いるはずのない青い鳥を 探していられた
まだ 夢見る少年だった頃…
そんな頃だったかな…
ぼくが恋を知ったのは― |