偽鑑先生の作文講座 その四
四、表現技法(修辞法)―比喩表現を楽しもう《4p》
 

 三、(いよいよ、やっと、どうにかたどりついた)本題(なのに、その本題の中)の前置き
   
 比喩表現と言っても、学問的にはいろいろな分類があったりするのだ。しかし、そんな区分けをいくらしたって面白くもないだろうから簡単にすますのである。偽鑑先生も実際の区別はよく解らなかったりするのである。(次の部分は大切なところなので、後でノートに整理しておくように)
 
   〔比喩のいろいろ〕
 
・直喩 「のような、〜に似た」というような言葉をつかって、ちゃんと喩えてますよと教えてくれている、割と親切な技法。
・隠喩 直喩とは違って、たとえてますよというような言葉を使わず、こっそり喩えてしまう、ずるい技法。
・換喩 あるものをそっくり他の言葉で置き換えてしまう、教養がないと理解できないこともあるたとえ。一例を挙げると、日本の貧困な住宅事情を、「うさぎ小屋」なんて表現したり、素直に「日本人」と言えばいいものを、「東洋のエコノミック・アニマル」だの「黄色い猿」だのと侮辱的表現したりするのも、換喩なのである。ウーン、国際問題になりそうでまずい。ではがらりとかえて、
  「悲しいことがあると開く皮の表紙」(「卒業写真」)
あの頃は、まだ松任谷ではなく新井由美だった。一九七〇年代初め、泉谷や拓郎や岡林や陽水や森魚なかり聞いてた耳に、ユーミンの曲は新鮮に聞こえたなぁ。まだみゆきはいなかったし……個人的感傷に浸っている場合ではないのである。この「皮の表紙」というのが、まさしく「卒業アルバム」の換喩なのである。
・提喩 換喩の一種で、……詳しいことは、西田先生に聞くか、「レトリック感覚」(佐藤信夫)という研究室にある本を読んで欲しいのだ。
 
 他にも、引喩、諷喩、声喩、字喩、濫喩、類喩、逆喩なんて、何が何だか、いったい誰が考えたのか、きっと変質的な比喩マニアがいて、そいつの仕業だろうと思ってしまうくらいなのである。こうまで細かな分類にこだわる奴は、きっととんでもない学者さんか、変質的比喩マニア以外には考えられないのである。どちらでもない皆さんは、最初の二つを覚えておけば十分なのである。
 理屈はこのくらいにして、去年までの学生さんが探してくれた比喩表現の中から、いくつか取り出して、解説を加えていくことにしましょう。少し古い例があるのは我慢しましょう。
 
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