偽鑑先生の作文講座 その四 | |
四、表現技法(修辞法)―比喩表現を楽しもう《16p》 |
|
九、検証(隠喩―人生〜川・坂道) |
さて、「川の流れのように」なのである。この歌は、人生を川やら道やらに喩えるという手法によって全編が成り立っている。この「人生→川・道」というパターンは古今東西やたらに使われまくっていて、ちょっとませた中学生でも書いたりするのである。だからよっぽど巧い表現をしないと、失敗に終わるのである。この秋元康の「川の流れのように」などは失敗作の好例と言ってもいいくらいの駄作なのである。ただ中学生でもわかるような書き方をしているので、馬鹿な大衆に受けるのも事実なのである。難しい事書いていては、商売にならないのである。詩人ではなく、歌謡曲の作詞家である秋元康は、その辺のことをよ〜くわかって、お金儲けのために計算ずくで書いているのである。それなのに、そんな秋元康の手にまんまと引っ掛かって、これを好きな比喩の例、上手な比喩の例として提出した学生さんは、よっぽどの文学音痴か、ただのカラオケ大好き少女なのである。(せっかく探してくれた学生に、なんてひどい事言う先生なんでしょう。変なのを提出すると、卒業した後でこんなひどいこと言われたりするのである。でも、かわいそうだが仕方ないのである。偽鑑先生は、時として、冷たい批評も辞さなのである。まさかとは思うが、ひょっとして熱狂的な秋元康ファンの方がいらしたら、「川の流れのように」のどこが、どんな風にすばらしいのか、しっかりと文章に書いて反論しましょう。その反論によっては、すぐに自説を引っ込めてしまう偽鑑先生なのである。そういうところは、口の割に意外と素直だったりするのである。) さぁ、もう一つ「川のながれのように」を越える失敗作を御覧にいれましょう。 ・長い長い登り坂 走ってみても同じこと 登り坂さ人生は 下り坂は落ちるだけ (「登り坂」長淵剛) あーっ、恥ずかしいー。こんな詩書いて、その上大勢の人の前で歌って、よく恥ずかしくないものだと、偽鑑先生は思うのである。ひょっとして長淵剛には、恥ずかしいという感情がないのかもしれないとまで言ってしまうのである。長淵剛の熱狂的なファンがいたら許してくださいね。ちょっと口がすべっただけです。本気でこんなこと思っては…・・・以下略。 最近の子は何するかわからないので怖かったりするのである。ひょっと間違って、斎藤ユキと不倫しやがってなんて、古いこと持ち出して、尾崎豊のことを何か言おうものなら殺されかねないのである。くれぐれもナイフでグサリというのはやめてくださいね。そういう時は、刺す前にひとこと言ってくだされば、土下座でも何でもしちゃいますんで・・・・・・やたら気が弱かったりするのである。そんなに怖かったら余計なこと言わなきゃいいのに……分かっちゃいるけど止められない、なのである。偽鑑先生は、とりあえず、何に対しても一言はイチャモンつけたり、皮肉言ったりしないと気がすまない性分だったりするのである。でも口のわりに、根は優しくて、気の弱い人だったりするので、暖かい気持ちで見守ってあげて欲しいのだ。 どうせ人生を何かに喩えるなら、もう少し工夫というか、ヒネリがなくてはいけません。ヒネリなさい、ヒネリなさい、なのである。そういうことで、今度は少しはマシなのをお見せしましょう。 ・傾斜10度の坂道を 腰の曲がった老婆が 少しずつのぼってゆく 紫色の風呂敷包は また少しまた少し 重くなったようだ 彼女の自慢だった足は うすい草履の上で 横すべり横すべり のぼれども のぼれども どこへも着きはしない そんな気がしてくるようだ …………………… 悲しい記憶の数ばかり 飽和の量より増えたなら 忘れるよりほかないじゃありませんか (「傾斜」中島みゆき) どうです、けして叙景詩ではありませんよ。あくまでも比喩と解釈しましょう。長淵剛の「登り坂さ人生は」と比べて、おなじ「人生→坂道」という手法を用いながら、この違い。こうまで違うと、歌手としてより、人間としてのスケール……。(言い過ぎました。あやまります。)長淵剛に比べて、やたら具体的で、リアルでしょう。作詞家に限らず、初心者や才能のない人間は、とかく抽象的な言葉ばかり使って、それで立派なもの書いたような気になるという過ちを犯しがちなのである。ひどいのになると、臆面もなく「愛は勝つ」なんて、クレヨンしんちゃんか、ウルトラマンが言うような事を叫びだしたりする馬鹿………。また言い過ぎました。今の部分一行抹消。(落語好きだと「代書屋」だと気付くんだけどな。若い子には無理かも知れない。まぁ、西田先生向きかな。)具体的描写によっていかに抽象的なことを語るか、具体性の中にいかに普遍的真実を盛り込むか、形而下における形而上学。これが大切なんだということは覚えておいていいことなのである。(またずいぶん真面目になりましたね。難しかったら無視してください。そうたいしたことは言ってませんから。) (この章続く) | |
![]() ![]() |