『列仙全伝』:研究(一)
第一節 『列仙全伝』について《4p》

 1-4 『列仙全伝』の伝本について
 
 上海古籍出版社の中国古代版画叢刊に収められている「列仙全伝後記」にも あるように、『列仙全伝』の伝本の種類はさほど多くは無い。(注15)今回筆者が研究に際し目を通した主なものは次にあげる六種である。 うち(B)と(C)、(D)は(A)と同種のものであり、(E)と(F)も同一の和刻本であることから、主に本研究では(A)と(E)の 二種を用い、必要に応じて他本を参照した。
 
(A)『列仙全伝』九巻 萬暦二十八(一六〇〇)年 
   鄭振鐸先生旧蔵原刻白棉紙初印本影印
   中国古代版画叢刊(三)所収 上海古籍出版社(以下「玩虎軒本」と略称)
(B)中国古代版画精品系列叢書所収 河北美術出版社 (以下「簡体字本」と略称)
(C)中国民間信仰資料彙編第一輯六所収
   万暦二十八年汪雲鵬刊本影印本(以下「民間本」と略称)
(D)正大印書館 明・王世貞輯 絵図列仙全伝(以下「正大本」と略称)
(E)『有象列仙全伝』全九巻九冊 
     慶安三(一六五〇)年版 
     大谷大学所蔵 所蔵番号 外大一七九
(F)『有象列仙全伝』全九巻三冊 
     慶安三(一六五〇)年版
     大谷大学所蔵 所蔵番号 外大三四一二) 
                      (以上(C)(D)ともに「和刻本」と略称)
 
 このほか未見ではあるが、以下の数種のごとき諸本が存在するようである。
 
・信州大学所蔵 台北、偉文図書出版社 一九七七
・慶安三年版 京都 藤田庄右衛門 全九巻五冊  同志社大学・日文研所蔵
・慶安三年版 京都 芸艸堂 全九巻八冊  慶安版をもとに明治以降に後刷  明治大学所蔵
・寛政三年版 大阪 書林柳原喜兵衛等 全九巻八冊  人文研所蔵
 
 こうした諸本の優劣について論ずることは今回目的とするところではなく、今後の研究課題としておき、 ここでは筆者の実見した六種についてだけ簡単に解説しておくことにしたい。

 [注釈]
1ー4
注15 中国古代版画叢刊所収「列仙全伝後記」
  ……本書傳本不多、所傳又多爲次印本或清初重修本。□北京圖書館所藏、爲清初コ讓堂重修本、上海圖書館及北堂圖書館所藏皆次印本。我所今用鄭振鐸先生舊藏原刻白棉紙初印本影印爲所知傳本中最好的一種。版畫部分按原尺寸製版、文字部分以四葉縮成一葉影製,仍使圖文並茂、以便讀者參閲,一併説明如上。

 
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