中国の図像を読む
第六節 黄金バットは中国生まれ?《10p》
 
  (「五、蝙蝠文あれこれ―応用編―」のつづき)
 
 一方、三十・三十一図は中国の凧に描かれた蝙蝠である。特に三十図は、凧の全面に無数の蝙蝠が描かれており、「洪福満天(萬福流雲)」と題された大変おめでたい凧である。中国の凧の図案は大変カラフルで、 華やかなものが多く、そこには様々な吉祥物が図案化されている。特に日本人のイメージする凧と大きく異なる点は、様々な動物達のリアルな姿が 凧の形体として用いられているところである。鶴や蝶ならまだしも、トンボやセミ、カマキリやナマズ、蛙にオタマジャクシ……こういったものたちが 緑や赤といった原色で描かれるにいたっては、日本人の感覚とは相当な違いがあると感じずにはいられない。

三 十 図
洪福満天 (『中国の凧』より)

三 十 一 図
福寿 (『中国の凧』より)
三 十 二 図 中国の凧のいろいろ (三図とも『中国の凧』より)
 三十三図にあげるものは、詳しい用途は不明であるが、蝙蝠をデザインした陶器製の玩具である。 一方、三十四図にあげる洋風の小瓶は、清代の鼻煙壺の一つであるが、ここにも寿の字をはさんで二匹の蝙蝠が意匠化され、その周囲には雲気文が描かれている。同じタバコに関するものでは、三十五図にあげる嗅ぎタバコ屋の看板にも 蝙蝠がデザインされている。このように、陶器や衣服ばかりでなく、こどもの玩具からタバコ屋の看板にまで、人々の生活の広範囲にわたって 蝙蝠文は用いられているのである。
三 十 三 図
陶器製の玩具(北京)
(『中国の玩具』より)

三 十 四 図
貼黄鼻煙壺(清)
(故宮博物院蔵)

三 十 五 図
点心の店(右)とたばこ屋(左二点)の看板
(『ひとものこころ』より)
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