中国の図像を読む
第六節 黄金バットは中国生まれ?《8p》
 
  (「五、蝙蝠文あれこれ―応用編―」のつづき)
 
 一八図にあげる奇妙な形をしたものは、清代の冠を架けるための台座であるが、ここにも寿紋の周りにたくさんの蝙蝠の図が 配され、特に上部には蝙蝠とともに雲気文が描かれている。あるいは一九図にあげるものは現代の四川漆器の一つであるが、 同様に雲気文が用いられている。これらの例のように「雲」もまた蝙蝠とは大変相性のよい文様なのである。

(↑クリックで図像拡大)
十 八 図
夾彩透彫福寿文冠架
(『中国の陶磁11 清の官窯』より)

十 九 図
金色蝙蝠文桃形入子
(『四川漆器』中国工芸美術叢書より)
 二十図に見られる一風変わった形をした蓋付きの壷は、連瓶と呼ばれる形式をした唐子文の描かれた器であるが、そこには前章で紹介した天から舞い降りてくる五匹の蝙蝠が描き込まれている。同様に蝙蝠文が描かれているものに、二十一図に示したような花盆もある。二十一図の方では、女仙人が手にした瓢箪に(!)向かって吸い込まれるように 多くの蝙蝠が天から舞い降りてきているが、画面右側には鹿も描かれているなど、吉祥文としての条件を充分に備えた逸品である。
 二十二図に紹介するものは、一六図で紹介したもの同様、清代の皇后が用いた普段着の一種である。この衣裳の裾の部分には前章で紹介した蝙蝠と古銭をあしらった「福在眼前」と題する模様が織り出されている。(この章続く)

二 十 図
粉彩唐子文連瓶(清・乾隆)
(『故宮開院七〇周年記念
北京・故宮博物院名宝展図録』より)

二 十 一 図
仙姑鹿車図花盆(清)
(『明清の美術』より)

二 十 二 図
湖色暗花坎肩
(『故宮開院七〇周年記念
北京・故宮博物院名宝展図録』より)
前頁《7p》へ戻る    次頁《9p》へ続く