中国の図像を読む | |
第六節 黄金バットは中国生まれ?《5p》 | |
(「四、蝙蝠文あれこれ―基本パターン―」のつづき) |
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2、桃と銭と蝙蝠と 蝙蝠とともに描かれるものの代表の一つに、穴のあいた古銭がある。穴あき銭に限らず、貨布や泉刀などの古銭もしばしば吉祥図に描かれることがあるが、 これらは当然財福の象徴として用いられているものである。そんな五福の中の「富」を強調した図案が七図にあげるものである。この図には、二枚の古銭が描かれているが、 その古銭を中央の蝙蝠が両の翼でしっかりと捕まえている。実はこの古銭、その穴が開いている状態を「眼」ととらえて、眼銭と称する。そしてこの眼銭が「眼前」という 言葉と同音なのである。すなわち、この銭は単に富貴を象徴しているのみではなく、富貴に代表される幸福が眼の前、すぐ手の届くところまで来ているという吉祥をも 表現している。そこで、こうした図を一般に「福在眼前」と呼んでいる。 | |
![]() 七 図 福在眼前 (『吉祥図案解題』より) |
![]() 八 図 福寿雙全 (『吉祥図案解題』より) |
八図にあげたものは、七図同様に眼銭と蝙蝠を描いたものではあるが、描かれているものはすべて二つずつ……一対になっている。 対という概念を好む中国人らしい図像であるが、この図像は「福壽雙全」と題されている。九図もまた同じく「福壽雙全」と題された図 であるが、この図にも前二図同様、蝙蝠と銭が描かれた上に、さらに一対の桃が描かれている。桃は仙桃という呼び方もあるように、やはり中国伝統の吉祥物の一つである。 その寓意性の主要要素は長寿ということであるから、この図は銭によって代表される財福とともに長寿をも願う図像であるということになる。もちろん、 銭抜きで蝙蝠と桃が描かれた十図のようなものもある。 | |
![]() 九 図 福寿雙全 (『吉祥図案解題』より) |
![]() 十 図 (『吉祥図案解題』より) |
以上紹介した例は、銭と桃によって財福と長寿とを象徴させたものであったが、似たような趣向の図に「福禄壽三星」と題された十一図のような図像がある。鹿に乗っている老人は日本人にも馴染みの寿老人であり、別名老人星とも呼ばれる。後ろには一人の童子が付き従い、肩に桃の枝をかついでいる。 さらにその上を一羽の蝙蝠が飛び交っている。鹿は禄と同音であり、寿老人と桃は長寿、そして蝙蝠は幸福を表す。いわば「福・禄・寿」揃い踏みなのである。(この章続く) |
![]() 十 一 図 福禄寿三星 (『吉祥図案解題』より) |
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