第2章 ルールの移り変わり
バスケットボールのルールは、最初わずか13条だけであったが、これはネイスミスが作成したオリジナルルールであり、現行のルールの中にはその精神が引き継がれているのである。しかし、このルールは不十分であった為、現在までに幾度も改正され今日のようなスピード豊かなスポーツに発展し、そして次のようなルール改正はゲームの発展に重要な影響をもたらした。
1908年にドリブラーのショット禁止というルールの廃止があり、これによりオフェンスがスピーディーになり攻撃技術が多様化し、1913年にアウトオブバウンズの時は、その場所に最も近いアウトから相手プレイヤーがスローインすることになったので、コート外での乱闘がなくなりコート外周の金網やネットの撤去に結びつき、ゲームもスピーディーになった(文献2)。
1923年にフリースローは、ファウルされた者が必ずスローしなければならなくなったことにより、一人一人の責任感が今まで以上に必要になり、それに伴って技術の向上が自分の自信にもつながり、全てのプレイに積極性がでてきた。
そして、1932年にボールを保持したチームは、10秒以内にフロントコートにボールを進めなければならなくなった。それまでは積極的に攻めなくなっていてゲームの興味が薄れてしまったが、コートにセンターラインを引いたことでオフェンスが活発化し、ゲームのテンポが速くなって興味深さも増した。
同じく1932年にボールを保持しているプレイヤーは、フリースローレーンに3秒間止まってはならないというルールができ、1935年からはボール保持、非保持に関係なくオフェンスプレイヤー全員に適用されるようになった。これは、ラフプレイの頻発を防ぐためのルールなのである。これによってフロントコートでの攻撃法が多様化し、センタープレイヤーの動き方が進歩した。
1937年には、フリースロー及びショットが成功した後のジャンプボールが廃止になったことで、ショット成功のたびに中断していたゲームは、スピ―ディーになり、ゲームのスピード化に伴って速攻が重要になって、センタープレイヤーにもいわゆる脚力が求められるようになった(文献2)。
1908年から1937年の間に改正されたルールにより、ゲームはスムーズに行われるようになり、ますますスピード感があるものとなってきてディフェンスもオフェンスも技術が向上し、ゲームの楽しさが出てきたように思える。このようにバスケットボールのルールは毎年様々な改正が加えられ、今も進化を続けているのだ。
2000年5月には、FIBAがシドニーオリンピック以後の国際競技規則原案を決定し、シドニーオリンピックで承認され日本でも2001年度から導入されたのである。改正は多岐にわたるので、その一部のルールについて述べようと思う。
時間制限は、10分のクオーター制を採用し、ショットクロックは30秒から24秒に、ボールをフロントコートまで運ぶ制限時間は10秒から8秒になり、スピーディーな試合展開が期待される。ファウル規定の変更では、1チームが各クオーターに4回のプレイヤーファウルを犯すとチームファウルとなり、ボールが下からバスケットに入った場合、故意であっても偶然であっても、また脚のどの部分であっても故意にボールを蹴ったり止めたりするとバイオレーション(注6)となった。そして、ディフェンスプレイヤーがバックボードやリングを揺すってボールがバスケットに入るのを防ぐと、競技時間中ならプレイヤーのテクニカルファウル(注7)となり、罰則は1個のフリースローとセンターラインのアウトからのスローインとなり、ボールが空中にある間に競技時間の終了の合図があった後ならゴールテンディング(注8)、又はバスケットインタフェア(注9)となった(文献5)。
そして、2001年4月に長年続いたゾーンディフェンス(注10)禁止が解禁になった。ゾーン禁止が解禁になりプレイヤーの意見は、「ボールがもっと回るようになる。絶対にポイントが増える。」などがあり、「ゾーンをするならスリーポイントラインを短くし、ショットクロックを長くする必要があると思う。さらに5秒ルールを復活させ、8秒でボールを運ばなければならない。それらが施行されればゲームはスピーディーなものになると思う。」という意見がある。そして、「低身長者はゾーンに塞がれて、もう絶対にバスケットに向かって行けない。得点しにくい。絶対的にバスケットボールのゲームを殺すことになる。」などの意見もある。また、ルール改正については、「今のゲームに問題点は見つからないし、テンポが少し速くなってコールも少し増えたからバスケットに向かうのは前より楽にはなったし他に問題はない。ルール本体を大規模に変更する必要があるとは思わない。どんなルールの下でもただプレイするだけ。体で阻止しディフェンスすることもできた昔(1990年代)のゲームは良かった。」などの意見もある(文献6)。
賛否は様々であるが、私はゾーンについては反対ではない。ゾーンは基本的にボールのある所にディフェンスが集まるので、中に(ゴール近くに)入って行くと低身長者は囲まれ潰されることも考えられるが、ゾーンされた時は外からのシュートが有効になる為、特に低身長者が得点しにくいということもないと思うことや、攻撃方法が増えることも考えられ、また新しい展開が期待できることから興味深いものとなることが考えられるので、ゾーンには反対ではない。しかし、あくまでもルール改正はプレイヤーの為であって欲しいと思うことから、プレイヤーの意見を尊重しつつルール改正を行ってもらいたい。