おしゃれとしての眉に対する美意識は古くから文化として残ってきた。形を整えるために眉を抜いたり剃り落としたりする風習は現代まで続く。その間、眉が細く弓なりが良いとされた時代もあれば、1980年代、女性の社会的地位の向上により、できるだけ自然で太くて強さがある眉が流行とされたときもある。
当時の「流行」というものが、現代人にとって必ずしも美とされるわけではないが、その化粧方式を認めた社会ではそれが美しいとされ皆が同じ化粧をした。
2、30年ほど前の「流行」といえば、デザイナー・販売側が主導権を握り、大衆はその追従者であった。ところが今日では、昔ほど皆が皆同じ眉化粧をしない。
個人のファッションに対する美意識の変化はもちろん、価値観、趣味、好みの多様化・細分化が進んでいることが要因ではないかと考えられる。
第1章では、昔の人々の美意識と、化粧の変化や必要性などを、ポーラ研究所研究誌『化粧文化』の編集長を20年務め、化粧文化・顔文化研究の第一人者でもある村澤博人氏の著書『美人進化論』や『顔の文化誌』、彼のインタビュー記事な
どから日本人の美の変遷についてまとめていく。
第2章では、「眉化粧」の変遷を1980年から今日までの25年間にしぼり、芸能生活25周年を迎えた松田聖子を例としてとりあげ、話を展開していく。彼女の眉化粧が、当時の人気や、社会の動向、さらに流行とどのように関わって変遷して
行くのか、彼女の美意識の変化にも注目しながらみていく。
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第3章では25年間の「時代」の変遷をそれぞれ経済・メディア・ファッションの三点から80年代、90年代、2000年代と、10年単位に分けてみていく。
第4章では眉化粧25年間の変化を時代の変遷と照らし合わせながら結論付けてく。また、現代での眉化粧の有用性やあり方について新聞記事や心理療法の実験結果などを交え今後の化粧の役割を考察していく。
眉化粧の変遷とは日本社会のうねりと同調した動きであると考え、女性の美意識は社会の動きと共に変わって来ているといえる。
眉化粧の変遷を見ていく中で改めてこの伝統とも言える眉化粧文化の意義や必要性を今後も追究していきたい。