(目次)

 

◎序章

 

◎第1章 流行のメカニズム

  1−1 流行とは何なのか?

  1−2 流行とファッションの関係について

  1−3 流行はどのように作られるのか?

◎第2章 大学生と流行 

  2−1 男女関係なく大学生全体の流行に対する態度

  2−2 男子学生の流行に対する態度、考え

      

◎第3章 流行と大谷大学生

  3−1 大谷大学生の学科別に男子学生のファッションスタイルを分析

  3−2 分析した結果、違いを考察

◎終章

◎引用、参考文献

 


 ◎序章

 現在の流行と昔の流行とでは、意味合いが違ってきているのではないか。」という所に疑問を持ち、現在における「流行」とはどういう意味なのか。流行をファッションの分野から考察し、その関係性を明らかにしたいと考えた。

そして、私と同じ世代の大学生にスポットをあて、大学生と流行について書きたいと思う理由としては、女子の流行というのは、比較的わかりやすく、男子の流行は目につきにくいのであるが、わかりにくいながらも、流行は存在しているし、最近は男子学生もおしゃれな人が増えたので、男子学生に絞ったのである。

また、第3章では、大谷男子学生と流行との関係を、考察している。大谷大学には、8つの学科があるのだが、それぞれの学科で、ファッションの流行の受け止め方が違うと考え、受け止め方が違うとスタイルも異なると考えたので、学科ごとのスタイルを挙げた。

全体の章立てとしては、1章では、「流行」という言葉の意味から始まり、「流行」の歴史から、流行の本質的な意味について述べている。2章では、大学生全般の流行に対する態度について始めに述べ、その後に男子学生に絞って述べている。3章では、大谷男子学生と流行について述べており、8つの学科すべての代表的なスタイルを挙げ、最終章につなげている。

 


 

◎第1章 流行のメカニズム

 

現代人の生活は流行によって左右されているといっても良い。それでは、まず「流行」という言葉の意味は何であるか、考えてみたい。


  1−1 流行とは何なのか?

 

辞典によると、 @「流行」とは、一時的に世間に広まること。

          A 流行り(はやり)。

         B 多くは、服装や言葉、思想や行動様式などがもてはやされ、一時的に世間で用いられることの意味で、集中的な社会的同調行動によって作り出される社会現象


次に、流行の歴史を簡単に見てみる。

中世および以前の社会における流行は、現在考えられるような流行現象とは相当異なっており、ごく限られた上流階級や一部の集団において、服飾を中心にみられた。それは、社会体制が閉鎖的であり、階級、身分の溝が深く、ごく少数の支配階級を除いては生活が極端に貧しく、生活様式そのものの変化に乏しかったからである。

                                        ↓

近世社会へ向かうに従って、流行は少しずつ大きく、幅の広いものとなり、やがては身分制度と衝突するような事態になった。日本の徳川幕府の時代を例にとると、最も低い身分とされていた商人は、資本を蓄え強い経済力をもつようになり、上位の武士階級をも脅かすようになった。下位のものの上昇によって身分制度がゆるみ始めると、服装も変化することになり、制度により、身分を区別する役割を担っていたそれまでの服装から考えられなかった流行現象が、一般の大衆の間に見られるようになっていくのである。

現代の流行は、これまでの流行とは、まったく違った大きな規模のものとして展開されている。近代までの流行は、上層階級から下層階級へと伝わるのが一般的であった。しかし、現代社会の流行の流れは、身分や地位など関係なく、横のつながりで、広がっているのである。現代社会の流行は、市民によって支えられるようになったのである。その意味では、まさに大衆社会の流行と呼べるし、現代の流行は、すべての人々によって展開されている。(例)パリのファッションに反発してロンドンで生み出されたミニスカート、アメリカの農夫の労働着であったジーパン etc

貴族社会から市民社会へという縦の流行は、現代社会ではまったく姿を消してしまったのである。


そして、見逃すことができないのは、情報化社会との相互関係である。マスメディアと結びついた流行の影響力、1960年以降テレビの浸透により、日本人の生活と生活観はすっかり変わってしまったのである。

また、現代の経済が大量生産システムをとればとるほど、大量に生産した商品を売るために、流行をつかって、現代人の消費意欲を刺激しなければならないから、流行の果たす役割は大きくなる。流行への期待が大きいほど、社会の価値基準は、流行によって左右されるのである。そして、現代の価値基準は、流行によって作りだされるといっても良いほどである。

現代の流行の特徴

現代人の行動は、一つの枠の中にはめこまれているため、自分の行動基準を、現代社会の価値基準、大衆と同じが良いといった価値基準に合わせることによって、心理的安定を求めようとしている。

現代社会の流行は、大衆社会、消費社会、情報社会という3つの柱に支えられ、社会変化を左右する要因として、現代社会を流動化させ、新しい方向へと変化させているのである。


そしてまた、流行は、現代人の行動の価値基準を社会と同調させ、その反面に自己顕示の欲求、つまり自分の存在を目立たせ、他人の注意を引くという行動もとりながら、不安定な心理傾向を安定させるという心理的役割を果たしているのである。


 さて、次に流行と関連の深いファッションについてである。  

 1−2 流行とファッションの関係について

現代では、 「流行」=「ファッション」 という図式が成り立つ。

洋服を購入する際に必ずといって良い程、流行というのは存在する。

ファッションの流行が世間に広がり始め、自分の中でもその流行を受け止めるまでには、次のような過程がある。

1.流行を初めて知る、接触する

2.その流行を理解する

3.流行を理解し、その流行に対して自分の中で、取り入れるのか、取り入れないのか、判断する。

4.判断の結果、その流行を良い物として、取り入れるのならば、模倣し、使用、活用する。

ここまでの過程が、自分の中での流行を受け止める過程である。

そして、自分の中で判断し取り入れた人を他者が見て、他者も先程述べた過程を通って自己の中で評価し、多くの他者がその流行を受け入れることによって、そこからまた、流行として広がっていくのである。

さらに、流行はその国の歴史、文化にも影響を受けているし、消費者として与えられている環境、つまり生活環境であるが、そういった事も影響しているのである。他には、企業やメーカーが作る商品、製品を含めて、売り買いするビジネス環境からも影響を受けるのである。

このように流行は、まったく別世界でひとりでに始まるものではないのである。環境の中に生まれてくるものである。


では、次に具体的にどのような形で流行は作られているのかである。

1−3 流行はどのように作られるのか?

ファッションは、その年、そのシーズンによって、流行は必ずといって良いほど存在している。流行は、前文で述べたように、自然発生的に生まれるのではない。流行は、予測もされているし、仕掛けもされているのである。その予測や仕掛けについて、これから順を追って説明する。

1.予測の一番最初は色である。

インターカラー(国際流行色委員会)

2004年4月現在イギリス代表が事務局を務めている団体。

世界の14カ国の加盟国から各国各団体2名の代表者を集めた会議を開き、毎年、各国が提案色を持ち寄り、2年先の流行するであろう春夏カラー、秋冬カラーを決定している。加盟に関しては、各国を代表する営利を目的としない公益的な色彩団体、1団体に限るという規定があり、日本からは創立当初より日本流行色協会(JAFCA・ジャフカ)が代表としてインターカラーに登録されている。

インターカラーでは、創立時より女性の洋服のカラーが会議で決定されているが、85年より男性の洋服のカラーも選定されるようになった。現在では、男性、女性共通カラーとして選定されている。

色の次に、ファッションの流行に直接大きな影響を与えるものは、

2.素材である。

先ほど述べたインターカラーの選定する流行色や、現在売れている商品、消費者の消費傾向などをふまえたうえで、素材を製造しているメーカーが、開発した1年先の商品を素材展として発表するのである。ここで、発表された素材が、実際の洋服になるので、各アパレルメーカー、デザイナーズブランドがどんな生地を発注したかが、次の流行を読むキーワードになる。ちなみに、この素材展は、毎年3月、10月頃に行われる。日本では、ジャパンクリエーションや京都スコープなどの日本のオリジナルの素材を発信する素材展が行われている。

 そして、素材展が終わると、

3.展示会・ファッションショーである。

アパレルメーカーが素材展を参考に、洋服という形として、実際の販売時期の半年前に発表するのである。発表する事を展示会やファッションショーといい、次のシーズン(季節)に「うちの会社はこういう服を作りました」というのを、そこでバイヤーやジャーナリスト、顧客さんにプレゼンテーションするのである。

番外編・ストリートファッションの流行 

一方で、ストリートから生まれる流行もある。ストリートとは、街の中の若者が着こなすファッションの事で、デザイナーや企業とは無関係に,自然発生的な流行を形成する。こういった流行は、街で支持されているショップが仕掛けている場合が多い。ビィンテージ古着、109系のギャルファッションはそうした例の一つである。ショップの商品が雑誌で取り上げられたり、街角スナップで実際に着ている人が紹介されたりすると、瞬く間に広がっていく。

このストリートから生まれる流行にとって、実際に着ている人と、それを紹介する雑誌が、とても重要な役割を占めているのである。 

展示会やファッションショーは、時代の気分を表現することが目的であるために、ストリートから生まれた流行を吸収して作られたものも少なくない。逆に、メーカーやデザイナーズブランドが打ち出した流行が、ストリートブランドに影響を与えることもある。つまり、メーカーやデザイナーズブランドが打ち出した流行と、ストリートから生まれる流行が、相互に影響しあって流行は生まれるのである。雑誌という情報源は、そのパイプ役であり、流行増進の役割を果たすものである。 

 


◎第2章 大学生と流行 

  2−1 男女関係なく大学生全体の流行に対する態度

 

この章では、大学生(男子、女子含む)は流行を、どのように感じているのか、流行に対する大学生のリアルな態度を明らかにする。

 流行に対する大学生の態度を考察するにあたって、そもそも流行を認識している大学生と、認識していない大学生がいるという、所から出発点した。

まず、予備調査を行っている。

予備調査の方法

調査期間:2000年3月中旬調査対象:20歳以上22歳以下の男子大学生36人と女子40人で、主に兵庫県の私立大学に在籍している3回生を中心としたメンバーである。

調査の仕方:男女それぞれ各1つの部屋に集まってもらい、調査の趣旨を説明した後にアンケートに答えてもらっている。

アンケートの内容:「最近のファッションの流行について、あるいはファッションにとどまらず、何が流行していると思うのか、そのものについて書きなさい」

※すべて複数回答を認めている。

結果↓

<男子大学生が知っている流行>

ガングロ、蛇革、ピンク色、茶髪、スキンジュエリー、ビーズアクセサリー、ミュール、厚底ブーツ、ハイソックス、カーディガン、ルイ・ビィトン、桃の天然水、なっちゃん、iモード、アサヒスーパードライ、アメ車、サッカー、バイク、パソコン、資格、10代の犯罪、叶姉妹、リサイクル、プレステ

<女子大学生が知っている流行>

ガルニシア、ビィーダインゼリー、美白化粧品、ラメ、アナスイ、発泡酒、ダイエットコーラ、生茶、アジアンテイスト、ブルボンプチシリーズ、ひまわりチョコ、ユニクロ、ブーツ、ファー、浜崎あゆみ、ポルノグラフティー、モーニング娘、iモード、インターネット、パソコン、エステ、ダイエット、占いサイト、スプリングコート、スーツ、カーディガン、ピンク色、きれい色、ブランドバッグ、リンク、ウィッグ、熟年離婚、パラパラ、ドラマ、プレ・モダン、フリーマーケット、ガーデニング、未来日記、ノンノ、スプリング、70年代、プレス、ソムリエ

 (分析)

女子の方が圧倒的にファッションに関するものが多い事が目につく。また、女子大学生の方が流行の範囲が広く、ジャンルが多種多様であるといえる。

男女ともにいえることは、テレビや雑誌から流行という情報を得ていると考えられる物が多く上がった。

流行の情報源には、

直接的な接触・・・・口コミや友人・知人がもっている、店員の薦め、店頭ディスプレイを見る、商品に実際に触れる など。

間接的な接触・・・・インターネット、テレビ、雑誌、広告、新聞 など。

二つに分けて考えることができる。つまり、何か必ず情報源が存在しているのである。

予備調査の結果から、男子大学生よりも女子大学生の方が流行についての回答数が多く、流行の範囲も広いという回答が得られたので、本調査では、男子学生と女子学生とを分けている。

本調査の方法

調査期間:2000年4月上旬から4月下旬調査対象:18歳以上25歳未満の男子大学生800人と女子大学生800人の合計1600人である。この1600人は、主に兵庫県、大阪府、京都府在住の者である。

質問内容:

   項目                            カテゴリー

@アルバイト                         している・していない

A世帯年収              800万未満・800万以上1000万未満・1000万以上1200万未満・1200万以上

B年齢                     18歳・19歳・20歳・21歳・22歳・23歳・24歳

C満足度数                        している・していない

Dウィンドウショッピング                      好き・嫌い

E外出頻度                         週2日以下・週3日以上

Fバーゲン                             行く・行かない

G衣服のセンス                             ある・ない

H値段                              詳しい・詳しくない

I流行                                 敏感・鈍感

J雑誌の月間購入数                 毎月購入する・毎月は購入しない

K新聞の購読時間                1日20分未満・20〜40分未満・40分以上

Lテレビ視聴時間                1日2時間未満・2〜3時間未満・3時間以上

M友人と接触時間                週2時間未満・2〜3時間未満・3時間以上

Nラジオ利用時間                 1日30分未満・30〜1時間未満・1時間以上

Oブランド                             気にする・気にしない

P好きなブランド                               ある・ない

Q恋人                                    いる・いない

(男子大学生の結果)

流行を認知するか認知しないかに大きく影響を与える項目が18項目のうち、

I流行に敏感か鈍感か、

J雑誌を毎月購入するか購入しないか、

P好きなブランドがあるかないか、

Q恋人がいるのか、

であった。

逆に流行を認知するか、認知しないかに影響を与えていない項目が18項目の中のうち、

A世帯年収、

B年齢、

K新聞の購読時間の長短、

であった

この結果、流行を認知する男子大学生は、お洒落な男子大学生で、ファッションにも女性にも興味があることがうかがえる。流行を認知するためには、流行に敏感で、今何が流行しているのかを知るために、毎月ファッション情報雑誌を読む事になる。

また、恋人がいる事から、日々、女性の流行にもふれる機会が多いことが考えられるし、プレゼントという形にもなるであろうし、彼女たちのファッションを身近に感じるからであろう。

 一方流行を認知しない男子大学生は、流行に鈍感で、雑誌もあまり買わない者ということになる。特に好きなブランドもなく、恋人のいない者である。

(女子大学生の結果)

流行を認知するか認知しないかに大きく影響を与える項目が18項目のうち、

I流行に敏感か、

J雑誌を毎月購入するのか購入しないのか、

P好きなブランドがあるかないか、

Lテレビ視聴時間の長短、

M友人と接触時間の長短、

Oブランドを気にするか気にしないか

であった。

流行を容認するか容認しないかに影響を与えていない項目が18項目のうち、

A世帯年収、

B年齢、

K新聞の購読時間の長短、

Nラジオの利用時間

であった。

流行を認知する女子大学生は、「I流行に敏感で、J雑誌を毎月購入し、P好きなブランドがある」ここまでは男子大学生と同じである。

しかし、女子大生の場合には、さらにLテレビの視聴時間が長い、M友人と接触時間が長い、Oブランドを気にするか気にしないか、という項目が加わっている。男子大学生と比較して、友人と接触時間が長い者が、流行を認知することから、女子大学生は友人との会話の中でも、流行(ファッション)の話題があると考えられる。また、流行を認知する者は、好きなブランドがあるというだけでなく、ブランドを気にするということから、どこのブランドの製品なのかということもこだわるようである。


2−2 男子学生の流行に対する態度、考え

次に、大学生の中でも、さらに男子大学生に絞り込み、認識している人、していない人の比較は前文でしたので、これからは流行は知っているが、その流行を積極的に取り入れる者と、消極的でいる者の違いを考察する。

予備調査方法

まず、予備調査として、流行について、思い浮かべるものを、すべて回答させている。

調査対象:主に兵庫県、大阪府、京都府に在住している男子大学生。調査人数:171人である。

調査方法:授業内に質問票を配布して、その調査内容を説明し、その場で回答済質問票を回収した。

質問表:

(質問)次の品目について、連想するブランド、品物等をなるべく多く記入して下さい。

                    品目                    回答例

                   洋服         カンサイマン、ミスタージュンコ、クリスエバート

                   帽子                     GAP

                   ベルト                 トラサルディ、ポロ

                   バッグ               ジャンポール・ゴルティエ

                    靴                      ナイキ

                   音楽、歌手      宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、小柳ゆき、グローブ、モー娘

                  化粧、メイク               ヤマンバ、ガングロ

                  自動車          デミオ、ワゴンR、サニー、マーチ、パジェロ、ベンツ、BMW、

                  飲食料品           桃の天然水、ラ王、日清トンガラシメンカジカジ、

                   雑誌              カジカジ、スマート、メンズノンノ、スプリング


                                             他 合計33品目 回答は他にも多数あり

この予備調査の結果、回答の多かったものは以下の通りである。

90%以上の回答率、洋服、帽子、バッグ、靴、髪型

80%以上の回答率、上記以外に、歌手、音楽、雑誌、飲料食品、携帯電話、化粧、メイク

60%以上の回答率、上記以外に自動車、ゲーム、スポーツ、コミック、広告、旅行先、グルメ、ホテル、プレイスポット、インテリア

30%以上の回答率、上記以外にスニーカー、書籍、コミック、観光先

30%未満の回答率、靴下、花、植物、都市、ペット、建物、おもちゃ

この予備調査の結果から、本調査では、80%以上の回答率が得られた、洋服、帽子、バッグ、靴、髪型、歌手、音楽、雑誌、飲料食品、携帯電話、化粧、メイクの範囲で本調査を実施している。

またこれらの回答に3種類にカテゴリー分けしている。

第1は洋服に関する回答にカンサイマン、ミスタージュンコ、クリス・エバート、帽子に関する回答にGAP、バッグにはジャンポール・ゴルティエのように「ブランド」名が挙がったので、「ブランド」を1つのキーワードと見なしている。

第2に飲料食品に関する回答に、桃の天然水というジュース類、ラ王や日清とんがらし麺というインスタント食品など男子大学生が日常的に食べそうなものが挙げられた。これらは、「日常生活」のことなので、「日常生活」をキーワードとした。

第3に雑誌に関する項目で、カジカジ、スマート、メンズノンノ、スプリングが挙げられた。これは、ファッションや音楽に関する情報収集源として考えられる。また、携帯電話はまさに、かかすことのできない情報源である。そこで、「情報収集」がキーワードとして挙げられている。

よって、カテゴリー内での検討から、3つのキーワードは「ブランド」「日常生活」「情報収集」とした。本調査は、このカテゴリーを元に行われている。

本調査の方法

調査対象:主に、兵庫県、大阪府、京都府に在住する男子学生500人

調査期間:2000年5〜6月

調査の回収率:93.4%で467人。回収率が高いのは、授業内に質問票を配布し、その授業内で回収したためである。

質問内容:男子大学生がどの程度、流行を知っているのか、それらに対する態度はどうなのかということから、流行を知っている、すなわち流行に対して積極的な男子大学生の特徴を明確にする目的で           行っている。 

具体的な方法:3つのキーワードに関する項目に対して、それぞれの質問に5点評価法で回答をさせている。

1:まったく思わない

2:ややそう思う

3:どちらでもない                      の5つの評価に対して、これらの尺度を用いて各番号に調査対象者に○をつけさせた。

4:ややそう思う

5:たいへんそう思う       

 


           (ブランド)                             (日常生活)                              (情報収集)

 @知らないブランドでも一度は購入したいと思っている       @アルバイトを週に15時間以上する                 @テレビを1日に2時間以上見る

 A好きなブランドと嫌いなブランドとが明確である           A恋人がいる                              A雑誌を見ることが好きである

 B新しいブランドに興味がある                     Bこずかいとして月に3万以上が自由に使える            B深夜の音楽番組は必ず見る

 Cブランドと無印ならばブランドの方を購入する            C通学時間が40分以上である                    Cインターネットを良く利用する

 Dブランドに自分は詳しいと思う                    D夜間の外出は週に2日以上である                 D自宅にパソコンがある

 Eブランド品を人よりたくさん持っていると思う             E通学には公共の交通機関を使用している             ECDハウスの会員である                                      

 F他人へのギフトはブランド品の方が良い               F下宿している                             F広告を見るのが好きである

 Gブランド品なら高い値段でも良い                  G食料品は自分で購入している                    G友人と話す時間が1日に2時間以上である

 Hブランド品は高級なイメージがある                 H買い物は好きである                          H携帯電話を使うのが好きである

 Iブランド品は持っていると自慢になる                I生活費の中で食費の占める割りあいが一番多い          I広告は気になる方だ

 Jブランド品をもらうと無印よりも嬉しい               J移動は交通機関を利用している                    Jiモード、eメールができる

<カテゴリー別に分析>

(ブランドに関する項目)

知らない新ブランドでも一度は購入したい

好きなブランドと嫌いなブランドがはっきりしている

新しいブランドに興味がある

ここから考察できることは、知らない新ブランドでも一度は購入したい、新しいブランドにも興味があるという項目が挙げられたことから、ブランド自体に関心があることがうかがえる。また、新しいブランドにも興味ある者といえる。好きなブランドと嫌いなブランドがはっきりしていることから、ブランドについてのイメージや知識が自分なりに頭の中にあり、いろいろなブランドの中から好きなブランドと嫌いなブランドを判断するだけの材料を持っていると考えられる。

(日常生活に関する項目)

自由に使えるこづかいが月3万以上である

アルバイトを週に15時間以上している

買い物が好きである

夜間の外出が週2日以上である

ここから、考察できることは、アルバイトを15時間以上していることから、自由に使えるこづかいが月3万以上であり、お金に余裕があることが考えられる。また、買い物が好きで、夜間の外出が週2以上であることから、買い物を楽しむことができ、かつ遊びに行くお金があることも推察できる。

(情報収集に関する項目

雑誌を見ることが好きである

自宅にパソコンがある

iモード、e-メールができる

インターネットをよく利用する

ここから、考察できることは、雑誌やパソコン、iモード、eメール、インターネットをよく利用することから、常に新しい情報を積極的に求めていると考えられる。そこで、情報探求型であると考えられる。よって、情報に関心の深い者ということになる。

(まとめ)

3つのカテゴリーをまとめると、男子大学生のうち、流行に積極的な者は以下のような特徴を持っていると考えられている。新しいブランドに興味があり、自分の好みでブランドを選ぶ者である。また、お金がある者、情報に関心の深い者である。



◎第3章 流行と大谷大学生

  3−1 大谷大学生の学科別に男子学生のファッションスタイルを分析

第2章では、一般的な大学生の流行に対する態度を述べたが、では大谷大学の学生は、流行をどう捉えているのかを第3章では考察する。また、その際には、大谷大学の8つの学科があるが、各学科によって流行の受け止め方に違いがあるのではないか、男子学生にスポットをあて分析する。

 *分析の方法としては、たくさんの人数にアンケートをとり、統計学的な視点から分析したかったが、時間的に余裕がなかったので、各学科を代表して1人選び、その代表者との話し合いによって分析している。そして、各学科を代表するファッションのスタイルを写真を用いて、分析しているが、この各学科を代表するスタイルとは、各学科の代表者との話し合いから、その学科の最大公約数つまり全体的に一番多く、典型的なスタイルを挙げている。また、各学科を代表するスタイルは、どういう傾向なのかを分かりやすくするため、ファッション誌でいうとどのジャンルに入るのかを決めている。その他には、ファッションの流行を知る情報源は何か、服を買うのに1番何にこだわるのかを質問し、回答してもらっている。この質問の目的としては、大学生は何から情報を得て、何を良しとして服を選んでいるのかを知るためである。



<真宗学科>


服の内訳

アウター:古着(1200円)

インナー:古着(3000円)

パンツ:古着(3000円)

靴:古着(4000円)

鞄:新品(10000円


最も多いスタイル:古着系

雑誌でいうと、どのジャンルに入るか:カジカジ、カスタマ

流行を知る情報源は何か:雑誌、友達の会話

服を買うのに1番何にこだわるか:サイズ

真宗学科の4回生は、古着系のファッションが多く、雑誌でいうと古着と新品の服をミックスしたストリートファッション系の「カジカジ」「カスタマ」という雑誌に載っているスタイルの学生が多い。代表的なスタイルの例を、写真1に挙げている。ストリートファッションとは、その名の通り街で自然発生的に生まれて流行するファッションで、デザイナーやアパレル企業が生みだすファッションに対抗的な意味合いがある。このファッションに身を包む若者は、ストリート・キッズとよばれる。

この古着系のスタイルは、写真1の服の内訳を見てもらったら分かるように、値段は非常に安いのが特徴である。なぜ、こんなに安いのかというと、アメリカなどを中心に、大量に仕入れられた古着だからである。ただ、古着は、安いのが特徴だが、外国から輸入されてくる服がほとんどなので、サイズがS・M・Lと揃っている事はまずないのである。なので、服を買うのに1番何にこだわるかという質問にサイズと答えている結果は、当然の回答なのであろう。



<仏教学科>

服の内訳

アウター:コート(9000円)

インナー:サーマル(20000円)

パンツ:ジーンズ(10000円)

靴:革靴(15000円)

鞄:(30000円)

最も多いスタイル:キレイ目カジュアル系

雑誌でいうと、どのジャンルに入るか:メンズノンノ、カジカジ

流行を知る情報源は何か:雑誌、服屋さんに行く、

服を買うのに1番何にこだわるか:デザイン

 仏教学科の4回生は、服に関心がある、気を使っている学生が多い学科である。その中で多いスタイルは、キレイ目カジュアル系のファッションが多い。キレイ目カジュアル系とは、ジャケットやコートなどに、ジーンズを履き、革靴を合わせるスタイルである。このスタイルについて、写真2を挙げているが、上着にはジャケットやコートを羽織って、フォーマルな要素を持つ洋服でまとめ、そういったモノにカジュアルの定番のジーンズを持ってくることによって、フォーマルすぎないスタイルを作っているのが、特徴である。また、カジュアルにもなりすぎないように革靴を合わせている点も、このスタイルの代表的な特徴といえるだろう。

 雑誌でいうと、高級なデザイナーズブランドや、ビームス、アローズ、シップスなどのカジュアルブランドを取り挙げている「メンズノンノ」と古着を取り挙げる「カジカジ」を、足したようなスタイルである。



<社会学科>


服の内訳

アウター:コート(9000円)

インナー:シャツ(10800円)

パンツ:コットンパンツ(6000円)

靴:スニーカー(6800円)

ベルト:革ベルト(9800円)

最も多いスタイル:キレイ目ストリート系

雑誌でいうと、どのジャンルに入るか:ファインボーイズ、スパイマスター

流行を知る情報源は何か: 雑誌、街で歩いている人を観察

服を買うのに1番何にこだわるか:デザイン


 社会学科の4回生は、キレイ目ストリート系のファッションのスタイルが多い。キレイ目ストリート系とは、仏教学科のスタイルと似ているのだが、違う点はストリートファッションの要素が含まれているという点である。ストリートファッションとは、前文で述べた通り街で自然に発生し流行するファッションであるが、ジャケットやコートなどキレイ目な服に、写真3に挙げているような、中のシャツにネクタイを合わせて見たり、シャツをズボンの中に入れて、フォーマルでいながら、パンツは決して高級なブランドのパンツではなく、またスニーカーを合わせていたりする。スニーカーを持ってくる辺りが、洋服の枠にとらわれまいとするストリートファッションの特徴ではないだろうか。

 また、雑誌でいうと、「ファインボーイズ」というキレイ目系な洋服を掲載している雑誌と、「スパイマスター」というストリート系の雑誌のスタイルを、ミックスしたスタイルが、社会学科の代表的なスタイルのキレイ目ストリート系である。



<国際文化>


服の内訳

アウター:ナイロンJKT(10000円)

インナー:スウェット(2000円)

パンツ:ジーンズ(3000円)

帽子:キャップ(1600円)

靴:スニーカー(12000円)

最も多いスタイル:オーバーサイズのファッション

雑誌でいうと、どのジャンルに入るか:スパイマスター

流行を知る情報源は何か:服屋さんのディスプレイ

服を買うのに1番何にこだわるか:デザイン

国際文化の4回生は、長身の学生が多く、オーバーサイズなストリートファッション、つまり意図的に大きいサイズを選ぶファッションが多い。長身の人が、オーバーサイズのファッションを選ぶのは、背が高いので、細いシルエットの服を着ると、体のラインが強調されてしまうからであろうと推測できる。

 雑誌でいうと、「スパイマスター」がストリートファッション系で、シルエットも太くオーバーサイズの洋服も掲載しているので、ジャンルはスパイマスターであろう。



<人文情報学科>


服の内訳

アウター:ナイロンJKT(3800円)

インナー:スウェット(3800円)

パンツ:カーゴパンツ(4000円)

靴:ナイキ(4000円)

最も多いスタイル:量販店系カジュアル

雑誌でいうと、どのジャンルに入るか:該当なし

流行を知る情報源は何か: なし

服を買うのに1番何にこだわるか:値段

 人文情報学科の4回生は、他の学科よりもパソコンの授業が多いということもあって、

パソコンマニアの人が多く、あまり活発的な人がいないので、服に関心のある人も少ない。極端にいうと、服よりもパソコンにお金をかけているのであろう。その中で多いスタイルを挙げるとすると、量販店系カジュアルという名前が最も的確であろう。量販店型カジュアルとは、大手スーパーマーケットなどで安くて大量に売っているカジュアルな服である。

 こういった量販店系のファッションは、雑誌も該当するものもない。



<史学科>


服の内訳

アウター:スウェットパーカー(1500円)

インナー:カットソー(2500円)

パンツ:ジーンズ(18000円)

靴:スニーカー(10000円)

最も多いスタイル:B−BOY系

雑誌でいうと、どのジャンルに入るか: ウーフィン

流行を知る情報源は何か: 雑誌

服を買うのに1番何にこだわるか:値段

史学科の4回生で最も多いスタイルは、B-BOY系である。B-BOY系のスタイルは、アメリカのHIPHOPの歴史や文化が背景にありアメリカで始まったのである。B-BOYのBとは、これはよく言われているのが「BREAK」の頭文字であり、HIPHOP文化が70年代末に路上でその音楽に乗せて踊っていた人達のことを「B-BOY」と呼ぶようになったという。

 B-BOY系のスタイルは、HIPHOPの文化からきているので、黒人ラッパーが着ているようなダボッとしたスタイルである。

こういったB-BOY系の雑誌だと、「ウーフィン」という雑誌がジャンルとしては的確である。



<文学科>


服の内訳

アウター:Gジャン(6800円)

インナー:Tシャツ(3800円)

パンツ:コーデュロイ(5800円)

靴:(3800円)


最も多いスタイル:古着系

雑誌でいうと、どのジャンルに入るか: カジカジ、カスタマ

流行を知る情報源は何か: 雑誌、友達との会話

服を買うのに1番何にこだわるか:サイズ

文学科の4回生も、真宗学科と同様に古着系のファッションが最も多い。雑誌のジャンルでいうと、やはり「カジカジ」「カスタマ」に入るだろう。そして、服を買うのに1番何にこだわるかという質問には、サイズと回答している。




<哲学科>


服の内訳

アウター:ジャンバー(5000円)

インナー:カットソー(800円)

パンツ:ジーンズ(8000円)

帽子:キャップ(1000円)

最も多いスタイル:量販店系カジュアル

雑誌でいうと、どのジャンルに入るか:該当なし

流行を知る情報源は何か:なし

服を買うのに1番何にこだわるか:なし

哲学科の4回生は、真面目で静かな人が多く、服に関心のある者も少ない。なので、人文情報学科と同様に量販店系カジュアルのファッションが最も多い。服に関心がないので、ファッション雑誌も読まず、雑誌のジャンルわけも該当なし。



3−2 分析した結果、違いを考察


真宗学科と文学科、人文情報学科と哲学科は、同じ系統のスタイルであった。後は、それぞれ、別々のスタイルになった。

人文情報学科と哲学科の4回生は、服に関心のあるものは少なく、ファッションの流行には鈍感である。性格的には、真面目であまり活発的でない人が多いようである。

 流行を知る情報源は、雑誌、友達との会話、街で歩いている人を観察する、服屋さんに行くなどであった。特に、雑誌という回答が特に多く、流行に対して非常に影響力が高いといえる。

 「服を買うのに1番何にこだわるか」という質問では、デザインと値段という回答が多く、同じ古着系スタイルの真宗学科と文学科の人の回答は、サイズと答えている。サイズと同じ回答をした理由としては、古着は中古なので、お店でサイズがしっかり揃っている

ということがないからであろう。

今回は、4回生をターゲットに選んだが、4回生になると就職活動があるので、他の学年で、アンケートもたくさんの人数に調査すると、より違いが明確になったかもしれない。


◎終章

8つの学科それぞれファッションのスタイルの違いはあるが、全体的に見ると、大谷大学の4回生の男子は、洋服に関心のあるものが多く、流行に敏感であるといって良いだろう。

また、従来から若者の流行離れはいわれてきたが、それとは逆に流行に興味がないものは少ないという結果が見られた。

男性のファッション誌もスタイル(系統)が細分化される事によって、増加してきている。

その結果が、若者の流行離れといわれた理由ではないか、しかし、それは流行離れではなく、流行が見えにくくなっただけではなかろうか。ファッションの雑誌も多数販売され、ファッションの情報があふれている世の中で、「流行しているから」「雑誌に載っているから」という理由で、その情報だけを頼りに洋服を選ぶ若者は、少なくなってきているのである。個性の時代といわれる現代で、ファッションに関して若者は、流行は把握しつつ、自分に合う、自分なりのオリジナリティなスタイルを探そうとしているのだろう。

 第3章で、アンケートとして雑誌でジャンルわけしているが、1つの雑誌だけを挙げている学科は少ない。2つの雑誌をミックスしたスタイルが多く、そういったミックスさせたスタイルが現在の若者の流行なのである。つまり、情報が溢れている世の中で、たくさんの情報の中から、自分が好きなもの、自分の個性に合ったものをいくつか選択し、その選んだ情報を、自分なりにミックスし、オリジナルなスタイルを作っているのである。


◎参考、引用文献

・「服装学の道しるべ」 2001年2月26日出版

・「ファッション業界がわかる本」 2000年10月13日出版

・「流行と日本人」(P.19〜P.33) 2001年6月6日発行

・「流行と日本人」(P.83〜P.92 )2001年6月6日発行

・Web http://www.fashion-j.com/bs/0102/4810.html