以前の中国は、挙式手順が繁雑で「坐花轎」(ツオホワチャオ)、「拝堂」(パイタン)などいろいろな作法があった。この「坐」は。「乗る」と言う意味であった「花轎」は、婚礼時に新婦が乗る飾りつきの輿のことであるここから考え、「坐花轎」は、「飾りつきの輿に乗る」という意味である。
以前、新婦は「坐花轎」して嫁入りするのが作法であった。いわゆる輿入れである。「拝堂(パイタン)」というのは、新郎、新婦が婚礼時に天地の神に礼拝する儀式のことを指している。こういった作法は、1949年以降は除々に簡略化された。現在、挙式前に、法律手続きをし、男女双方が病院で健康診断をうけて問題がないと、民政局で登録し、二人の写真が貼付された結婚証書を受領する。結婚証書受領と共に法的な正式な夫婦となる。
嫁入り道具は挙式前に新居へ、搬入することになっている。
結婚後の生活用品は男側で家具を、女側で寝室用具、台所用具を揃える。嫁入り道具の搬入は男側が受け持つ。
搬入当日は、車や品物すべてに赤色の大きな「喜(双喜)(ショワンシー)字形の切り貼り、町中、村中へ派手に示して道を走るので、特に目立つのである。
運び込む時は爆竹を鳴らして祝うのだ。挙式披露宴当日は、新郎新婦が写真館へ赴き写真(結婚写真)を撮る。都市部では値が張るが、凝った結婚写真を撮るのが、流行である。
新郎は、洋装で身を固め、新婦は、ウェディグドレスを着て、各種背景、姿勢の下を撮影する。披露宴は俗に「喜酒」(シーチウ)と言い、ホテル、料亭、自宅で行われる。
新郎新婦は必らず、会場、自宅の入り口に立って来客を出迎える。
客が全員着席すると、挨拶の長話はなく、代表者から披露宴開始が宣言され、食事が始まる。しばらくして、新郎新婦は、宴席へ赴き席次順に全員へ酒を注いで回る。その際、二人の一方が必ず満々と酒杯に注ぎ飲んでもらうことになっている。宴会終了時、二人の身内が来客全員に「 喜糖(6) 」(シータン)を配る。喜糖は「喜袋」(シータイ)という袋に入れられ、必ず偶数個で八個、十個、十二個が普通である。散会後、二人は入り口に立ち、一人一人客を送り出す。
来客(普通、若年層)中には新居へお邪魔して「鬧新房」(ナオシンファン)する人がいる。これは「鬧」は、騒がすを意味し「新房」は、新郎新婦の新居を指す。「鬧新房」は、新郎新婦の新しい住まい(新居)を騒がすということである。
新郎新婦に出会いや、恋愛過程を語らせ、芸をさせたりして、喫煙者は新婦に火をつけてもらったりする。
話に花が咲き、わいわい賑やかで俗に「鬧新房」という。婚礼のあと、普通、都市部の人は国内で新婚旅行をし、特に、裕福な人は海外へ出る。この外、披露宴欠席の同僚、親戚、友人、隣人へ喜糖を届け、祝賀気分のおすそわけとするが、これは結婚時通知の役割も兼ねている。
披露宴、参列の際は物を贈るのが普通で新郎新婦の趣味、習慣、経済状態などにあわせて現金、生活用品、記念品などを送る。
最近では、花束、花かご、商品券の贈呈が流行である。
現在、都市部では、春節、メーデー、国慶節(陽暦10月1日は、中華人民共和国の成立記念日のこと)など祝祭日の挙式が多い。
結婚休暇が長くとれ、来客も休みをとらずに済むからである。農村では祝祭日挙式もあるが新郎新婦両家で、取り決めた吉日に挙式するところもある。
また、相手選びについても変化が見られる。封建時代、結婚相手は、両親、年長者が決め当人は、決定に従うのが美徳とされた。
この状況は、1940年代まで続いたが、50年代以降段々と変化し現代、結婚は当人たちで決め、両親、年長者の意見は参考程度というのが普通であ る。
中華人民共和国成立後、青年男女の相手選びの基準は、常に政治、経済的情勢の影響を受けてきた。共産党政権誕生後の50年代、政府幹部、軍人に女性の人気が集まったが60年代前半には、経済発展が緒につき、政治も安定した結果、技術者、医師、研究員、教師など知識人に人気が集まり、共産党員で知識人なら上々であった。
文革期(1966年〜1978年)、政府は政治的必要上、思想的にかたよった政策を展開し知識人は、大迫害を被り労働者、農民兵士の社会地位が過分に引き上げられた。
その影響で当時、町中の女性は軍人、労働者と結婚するのを光栄とした。
1978年からの改革解放後の政府の「一部分人先富起来。」(一部の人が先に裕福になろう)の呼びかけから、成功して裕福になった「個体戸」(個人経営者)や「万元戸」がもてはやされた。万元戸とは年収が1万元を超える家庭である。
後、政府が知識人への不当待遇を改めたので知識人もまた一時、人気が出た。政治規制の緩和や海外交流の活発化に伴い、華僑、香港人、マカオ人、台湾人、外国人も人気の的となった。市場経済導入開始後の90年代、市場競争が厳しくなる「下崗」(シャンカン)(一時帰休)の労働者や、失業が大量に生じはじめ、低学歴で、専門技術のない人には厳しい時勢となった。
反対に、高学歴、外国語能力、専門技術を有した人には、有利で好環境、高収入、の地位を独占している。当然、女性からも大人気である。相手選びの価値判断基準が変異しようと中国人は「門当戸対(メンタンフートウイ)」(家相応)、「男才女貌(ナンツァイニューマオ)」、(男は才能、女は顔)の伝統観念が根強く相手選びの価値判断基準になっている。男性は美人でやさしく家庭運営の上手な女性を、女性は高収入で、自分よりも学歴が高く、才気に溢れ、仕事に真面目な男性を希望する。
ゆえに高学歴、高地位、高収入に過ぎる女性は適当な相手を見つけるのも一苦労である。一部の都市では、適齢期を過ぎる女性は、適当な相手を見つけにくく、これは社会的な問題となっている。
中国人の相手探しの手段は四種類あるという。
一、学校、職場、日常の付き合いから相手を選ぶ。
二、親戚、友人、知人等の紹介
三、結婚相談所で探す。
四、結婚相手募集の広告を出す。
この中で最も多いのは二である。