第一章 

映画「フォレストガンプ」の内容を簡単に紹介しよう。主人公のフォレストガンプは、生まれつき知能指数が人並み以下という人間だ。しかし、ガンプの母は女手一つで普通の子供と同じように育てようとする。地元アラバマ州の小学校に入ったガンプは、子どもたちからいじめられるが、ジェニーという近所の女の子だけは彼に優しく接してくれるのだった。そして、このガンプにも隠れた才能があったことが明らかになる。彼は、実は類稀なる駿足の持ち主だったのだ。それを買われた彼は大学のフットボールチームの一員となり、ルールはよく理解できないものの、持ち前の駿足で愚直に走り回り、相手を翻弄する。全米学生代表のフットボール選手に選ばれた彼は、時の大統領ケネディにホワイトハウスへ招待される。この頃ガンプはジェニーに思慕の情を抱いていたが、ジェニーには彼の愛を受け入れることはできなかった。その後、ベトナム戦争に従軍したガンプは、またもや愚直に周囲の命令通りに行動する。そして、状況をよく理解できない彼は、進撃しては負傷した仲間を運び出し、ついには勲章を贈られてしまう。だが、戦場で知り合った親友の黒人兵ババを救うことはできず、自分が助けた隊長のダンからは、両足を切断するくらいなら死んだ方がましだったと怒りをぶちまけられてしまうのであった。アメリカに戻ったガンプは、ワシントンの反戦運動で偶然にもジェニーと再会するが、反戦運動に身を投じたジェニーはガンプの愛をまたもや受け入れることなく姿を消してしまう。しかし、これでもガンプは挫折しない。けがの治療中に習った卓球でも才能を現したガンプは、中国とのピンポン外交の一端を担うのであった。今や有名人となったガンプは、コマーシャルの契約料を元手にエビ漁用の船を買う。これは、亡きババの夢を叶えるためだった。ババはアメリカに戻ってエビ漁をすることを夢見ながら戦場で散っていったのだ。アメリカに帰国後なげやりな生活を送っていたダンも加わり、やつれたジェニーを優しく受け入れたガンプだったが、ジェニーはまた何処へともなく失踪してしまう。数年の月日が流れた後、ガンプはジェニーからの手紙を握りしめてジョージア州のサヴァンナという町を訪ねる。ジェニーは自分が病に侵されていることを告白し、ガンプとの間に生まれた子どもと対面させる。ガンプは二人を故郷に引き取るが、程なくジェニーは他界してしまう。
以上が映画のあらすじである。この映画は封切以来、全米で大ヒットした。アメリカ人の心に大きな傷を残した「ベトナム戦争」をいかに捉えるかという問題が最大の話題となったのであり、さらにその背景にはアメリカ社会がかかえる「人種問題」というものが見てとれるのである。